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Side健治
美緒が俺を後ろから抱きしめて来た。それでも自分の犯した間違いのせいで散々、苦しめてしまった美緒に贖罪の言葉を紡ぎ、俺の身体に回された温かい手の上に右手を重ねた。
すると、美緒の声が俺の胸を打つ。
「健治……私……。健治と離婚をした事を後悔している。出来れば、もう一度、やり直したい」
「美緒、俺でいいのか?」
返した言葉も声が震えてしまった。
「私……健治のそばに居たい」
「俺も美緒と一緒がいい」
重ねた手が温かい。もう一度、この手を掴むことができた。
右手で美緒の左手を持ち、外された結婚指輪があった場所、薬指の付け根にキスを落とした。
「新しいの買おうか。リスタートのための指輪」
「ん、そうだね」
「ここも引越しようか」
「あっ、私、昨日、部屋決めてきちゃったんだ。電話しなきゃ」
「どんな物件?」
「格安物件でね。1LDK、日当たり良好で、気に入ったんだけど」
と言って、美緒は俺から離れてカバンから書類と部屋の間取りが、プリントアウトされた紙を取り出し俺に見せた。
「ココより、少し狭いけど2人で住める広さだよな。不動産会社に電話して、婚約者も一緒いいか聞いてみてもいいな」
「こ、婚約者?」
「100日規定で、あと3か月チョットは結婚出来ないから婚約者だろ? 婚約指輪も買いに行くか?」
「無職になる人からそんなものもらえません。給料何か月分の給料がなくなっちゃうんだよ」
と言って、美緒が笑った。
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