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健治の腕を消毒して、包帯を巻き直してから、すっかり冷めてしまったお味噌汁をあたため直し、おにぎりと卵焼きの朝昼ゴハン。
昨日の騒ぎで、冷蔵庫は空っぽでこんなのしか出来なかったけど、2人で食べるゴハンは美味しかった。
不動産屋さんに電話をしたらOKを貰えたので、あとで鍵を受け取りに行く事にした。その時は、大き目のマスクをしてなるべく顔を隠して行こうと思った。
健治は、左手をケガしているし、私は殴られた跡があるし、まるで、派手な夫婦喧嘩の後みたい。
鍵を貰うだけだから健治にはどこか違う所で待っていてもらう予定。
私は、マスクで厳重に顔を隠して、左腕をアームスリングで吊った健治と出かけた。
ターミナル駅から徒歩5分の不動産屋さんに行く途中、ジュエリーショップのショーウィンドウに飾られた、埋め込みの小さなダイヤがカーブを描くように並んだシンプルなのに素敵なデザインの指輪があって、一目惚れしてしまった。暫くジッと眺めて、不動産屋さんに行く事を思い出し、後ろ髪を引かれる思いで後にした。
まあ、あとで来ればいいんだけど……。
健治と不動産屋さんの前で別れて、店内に入ると昨日あった担当の佐藤さんが出迎えてくれた。
私の顔を見るなり驚いた様子で聞かれる。
「浅木さん、お怪我されたんですか?」
「ちょと、転んだんです」
と、最もわざとらしい言い訳しが返せない自分にトホホだった。
気を取り直して、説明を受けて鍵を貰い。
待ち合わせ場所のカフェに行くと健治の姿が無くて、ラインをした。
『さっきのジュエリーショップにいるから』
と返事があって、慌てて向う。
ジュエリーショップに着くなり
「ご結婚おめでとうございます」
と、店員さんに指のサイズを測られる。
「美緒、そのデザインが気に入っていたみたいだから、どうかな。もちろん、他のが良ければ好きなの選んで!
あと、店員さんに教えてもらったんだけど、俺ら直ぐにでも入籍できるらしいよ」
「えーっ!」
と驚いた。里美に100日って言われたんだけど……。
「同じ相手の方とは、離婚してもすぐに入籍できるんですよ。どうぞ、いつまでも仲良くなさってください」
店員さんに笑顔で言われた。
いえ、違うんです。このケガ、夫婦喧嘩じゃないんです(汗)
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