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 各駅停車しか停まらない駅に降り立ち、どこか懐かしい佇まいの商店街をのんびり眺めながら、健治と歩いた。  不動産屋さんの車で、物件を見に来た時に見えた揚げたてコロッケを売っているお肉屋さん、平台の上にカゴに入った商品が並んだ八百屋さん、前は気付かなかったけど落ち着いた感じの喫茶店まである。 「へー、いい感じだな」と健治も目を輝かせていた。  コンビニを通り過ぎて、マンションに着くとエントランスにあるのセキュリティキーに鍵を差し込み、「301」と部屋番号を押した。ドアが開き、エレベーターに乗り込んで3階に上がる。一番奥の角部屋のカギを開け、何もない部屋に入った。  小さな玄関をあがり、左手が寝室8畳クローゼット付、右手がリビングダイニングこちらも8畳、カウンターキッチンは3畳ぐらい。 「日当たりもいいし、いいんじゃない? リビングがチョイせまいかな? 家具が入りきらないな」 「うん、ソファーとテーブル置いたら歩く所がなくなっちゃうね」  そんな話をしていたらワクワクしてきた。家具も買い替えて、新しい生活を始める。夢が広がる。 「引越しの手配もしないとな。役所にも行って、婚姻届けに住所変更。やることがいっぱいだ」 「うん、がんばるよ」 健治がふと微笑み 「頼もしいな」 と言った。  その時、健治のスマホが着信を告げる音を鳴らした。    
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