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 帰りがけにスーパーで食材を買い込み、夕飯を作った。  片手でも食べやすいかな?と、人参ともやしとほうれん草のナムルを作って、お肉を焼いてカルビビビンバ丼。ナムルのにんにくチョット多かったかな。とか、考えながら仕上げの卵黄を乗せた。彩りも良いし、ごま油の香りが食欲をそそる。  元気が出そうなメニュー。うん、上等ね。  テーブルの上にどんぶりを置くと、ソファーで佐々木弁護士に渡された用紙に目を通している健治に声を掛けた。 「できたよー。コチュジャンあと乗せね」 「おー、美味そう。いただきます」 「いただきます」  にんにく入れ過ぎちゃったとか、お肉が柔らかくて美味しいとか、何でもない話をする。でも、そんな事が、とても大事だと知っている。  何気ない会話、日常のコミュニケーションの積み重ねが明日に繋がって行く。    食事が終わり、健治とソファーに座ると例の書類がリビングテーブルの上にあるのが目に付いて、気に掛かり話を切り出した。 「示談のこと、健治はどう思った?」 「俺は、生活を守れるなら受け入れるのも仕方ないと思っている。野々宮が出て来た後、また、同じ事が繰り返される事が無いような選択をしたい」 「そうだよね。裁判になって、有罪を勝ち取ったからといって、その後、また同じ事が起こったら嫌だよね。私も健治と同じ意見」  それから健治と私はスマホやPCで起訴・不起訴や心身喪失者等医療観察について調べた。  心神喪失がない状態で起訴されて有罪になったとして、最長15年だけど、だいたい3~5年で釈放されそうだ。  不起訴で指定医療機関に入ったとしても最長18カ月と書いてある。  それなら、意地を張らずに示談に応じて、貰うもの貰って、その後の事を約束させるのが一番良さそうだと思った。  この件に関しては、今後の自分たちの生活が掛かっているのだから、強か(したたか)になってもいいと思う。
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