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Side健治
話し合い場所として指定されたビジネスホテル内にあるミーテングルームのドアの前に立ち、美緒の事を見ると緊張した様子だった。
美緒が顔を上げ視線が合うと”大丈夫だよ”と言う風に微笑んだ。
俺も大丈夫だよと微笑みを返す。
ノックをすると中から返事があり、ドアを開けた。
部屋の中には、前回と同じように野々宮成明と佐々木弁護士が俺らを待っていた。足を進めると2人は椅子から立ち上がり挨拶をした。
「今回もご足労いただきありがとうございます。その後、お怪我の具合はいかがでしょうか」
成明に訊ねられ、見据えて答えた。
「お気遣いありがとうございます。私は、抜糸も済んでいませんので、思うように動かせずにいます。それに浅木は殴られた痣が消えていません」
「本当に申し訳ございません。一日も早いご回復を願っております」
と言って、成明は頭を下げる。
その後、「どうぞ、おかけください」と野々宮成明氏に促され、席に着いた。
「あの、先日の示談のお話、その後、ご検討されていかがでしたか?」
「こちらとしても、騒ぎを大きくするのは本意ではありません。ただ、野々宮さんと果歩さんが離婚をされた後も、確実に監視の目が緩まないことをお約束して頂かない事には首を縦には振れません」
「こちらも病院の存続が掛かっています。必ずご迷惑はお掛けしないように致しますので、どうか……お願い致します」
成明は頭を下げた。
「あの、私たちは、果歩さんに重い罪を望んでいるわけではなく。私たちの生活を脅かすような事をしないようにお願いしたいと思っています。本当にそれだけなんです」
成明は美緒の言葉を聞いて、真剣な面持ちで頷いた。
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