23

21/22

2931人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
Side美緒 「ただいま」と部屋に入り、明かりを点けた。 私の横で健治の「ただいま」の声が聞こえたから、「お帰りなさい」と言った。  リビングルーム  ダイニングテーブルもリビングソファーもなくなり、ラグマットだけが敷かれた部屋は、がらんと広く感じる。  引っ越し前で、調理器具も仕舞っているからお弁当を買ってきて、ラグマットの上にテーブル代わりにダンボール箱を置いて晩ごはんを食べていたら、 「貧乏くさいな」 と言って健治が笑うから私までつられて笑ってしまった。 「気持ちの問題だから、ピクニックみたいだねって思っておこうよ」 「そうだな、貴重な体験だな」  ご飯を食べ終わって、ペットボトルのお茶を飲みながら、気に掛かっていた事を口にした。 「ねえ、健治、野々宮果歩が不起訴になって、ご主人の言っていた通りに、地方の施設に入るとするでしょう」 「ああ」 「地方の病院に入るのって、もしかしたら服役するより辛いかも……って、思ったの」 「成明氏がどうするかは、俺らにはわからないから、気に病んでも仕方ないよ」 「そうだね、お任せしたんだしね。でも、あんなに綺麗だったのにやつれて、ショックだったんだ。病気って怖いなって改めて思った」  あの、「誰も愛してくれない」と叫んだ哀れな姿を思い出すと、気の毒で、私たちに関わり合いの無いところで、野々宮果歩も幸せに暮らせたらいいのにと思った。          
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2931人が本棚に入れています
本棚に追加