瞳から消えたもの 

13/24

2931人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
 スイートルームのバスルームだけあって、バスタブは4人は入れるような大きさで、ジェット付のもの。給湯器のスイッチを押して、カランから流れるお湯がバスタブに溜まるのを眺めていた。  バスルーム内を見渡せば、シャワーブースも別にあり、窓から見える東京湾の夜景も光が揺らめき綺麗だ。  自分よりも年下の婚姻関係を結んだ妻と初めて迎える夜に、緊張しているなんてバカみたいだな。ふと、自虐的に笑う。  しかし、会ったのも数えるほど、ふたりでデートすらしていない。キスもさっきの誓いのキスが初めてだ。  その時、バスルームのドアがバタンと開く。  視線を移すと、開いたドアから一糸まとわぬ姿、美しい体を晒した果歩が立っていた。  シミひとつ無い白い素肌、デコルテから柔らかい曲線を描いたおわん型の胸、その先端の果実は上を向いている。  細くくびれた腰のラインから繋がる丸みを帯びたヒップライン、その下の足の付け根の薄い繁みまで、何ひとつ隠す事なく、自信たっぷりに細い足を進め、あっけに取られている俺の前にやってきた。    肩に手を掛けられ、上目遣いで俺を見つめる果歩の赤い唇が動く。 「お風呂、入るんでしょう?」  少し首を傾げて、その手は、俺のシャツのボタンを外し始めた。 「か・ら・だ・洗ってくれないの?」  猫のようないたずらな瞳が、語り掛ける。 「せっかくだから楽しみましょう。ねっ」  俺は、手を伸ばし果歩に2度目のキスを落とした。          
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2931人が本棚に入れています
本棚に追加