瞳から消えたもの 

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 菅生さんの言葉が気に入らないのか、野々宮重則がワナワナと怒りに任せ、手を振り上げた。  ダァーンッ!と拳を振り下ろしテーブルを揺らす。 「脅かして従わせるのは、止めてください。もう、ウンザリです。お義父さんの愛情の掛け方が甘やかすばかりで、果歩の深刻な問題に目を瞑っていた結果です。猜疑心が強く自己中心的、心療内科へ掛かれば、間違いなく診断が下り治療が始まるレベルです。体裁など考えずに果歩のために何が出来るか、何をするべきか行動に移さないと後々後悔する事になりますよ」  果歩の心の病を作り上げたのは野々宮重則の間違えた愛情のかけ方と言っても過言ではない。  野々宮重則自身も、自分の意に削ぐわないと威嚇する。  威嚇してマウントを取りたがる。  不完全なコミュニケーション能力。  今、ここで、野々宮重則に言って、果歩の治療を受けさせないと手遅れになる気がした。 「果歩さんと不倫関係にあった私がお願いするのは、おかしいかも知れませんが、もう、果歩さんと関わり合いになりたくありません。ストーカー行為及び嫌がらせ等、止めて頂きたく存じます。口約束ではなく、念書等取り付けて静かに暮らしたいと思っています」  菅生さんの必死な様子で、果歩のストーカー行為が深刻なものである事が伝わる。あの出来事の後、自分が果歩を突き放したせいで、このような事態を招いたのではないかと申し訳なく思った。 「果歩の浮気に気が付いていて、放置していた私も悪かったんです。彼女の気性荒さについて行けず、家で機嫌良くして来てくれるならと、形ばかりの夫婦になっていました」
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