瞳から消えたもの 

22/24

2932人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
 果歩の行動はこの先、野々宮重則だけでなく、自分自身のアキレス腱になりかねない。気鬱になり、深いため息を吐いた。 「今回の事は、私にとって色々考える良いきっかけになりました。果歩から念書を取るのは、あの通りの性格なので難しいかもしれませんが、カウンセラーと弁護士を付けて作成させて頂きます。お義父さん、それでよろしいですね」 「ああ」と野々宮重則が小さく返事をした。  背広の内ポケットからスケジュール帳を取り出すと、まだ記入の無いページに書き入れた。  その内容は、”覚え書き” と ”野々宮成明は、菅生健治に約束する” から始まり、野々宮果歩に治療を受けさせる事、ストーカー・迷惑行為及び接近の禁止を約束する念書の作成などが記し、最後に野々宮成明のサインと本日の日付。  一通り書き終えるとピリッとノートから切り離し、テーブルの上に差し出した。  菅生さんのホッとした表情を見て、胸をなでおろす。 「すみません。本日は、ありがとうございました。私は、失礼させて頂きたく存じます」 「菅生さん、果歩がご迷惑をお掛け致しました。 アルゴファーマとのお取り引きも、先日、頂いた見積書を元に現在の取り引き会社よりも安価な物は、お願いしようと考えています。担当のMRさんもフットワークの良い方でしたらどなたでも構いません。古い慣習に囚われずに、お互いの利益になる正規の取り引きを致しましょう」  医院の健全化に一歩前に進んだはずだ。  果歩の事も治療を受けさせて、問題を起こさせないようにしなければならない。  
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2932人が本棚に入れています
本棚に追加