翌朝

2/3

2928人が本棚に入れています
本棚に追加
/409ページ
 一瞬、バスルームのドアを開けたら「キャー!」 というシチュエーションを期待してしまった。けれど、そんな事は起こらなかった。  バカみたいだなと思いながら、シャワーを浴びようとカランに手をかけた。  その時、手に触れるモノを見つける。  黒いヘアゴムだ。  引っ越しをしてからこの家に誰かを上げた事はない。  あれは夢じゃなかったのか⁉    じゃあ、誰だと言うのだろう。  どこまでが夢で、どこまでが現実だったのか……。    落ち着かない気持ちで体を洗い、バスタオルで体を拭いた後、脱衣室の洗面台の鏡の自分と向かい合う。  鏡に映る自分の体には、キスマークやひっかき傷などは見られない。   二日酔いの倦怠感が多少あるだけだ。    艶めかしい出来事は、夢だったのではないだろうか?  でも、それでは、ここにある黒いヘアゴムの説明がつかない。  誰と、どこまでしてしまったんだろう。  グルグルと無限ループに迷いこんだ思考に陥ってしまった。    とはいえ、平日の朝、出勤の時間が刻々と迫っている。  自分の悩みで、仕事を休むわけにはいかない。  洗面台の引き出しを開け、ドライヤーを取り出す。  ドライヤーのコードが、いつもと違う巻き方で収納されている。    やっぱり、誰かが、シャワーを使ったんだ。      
/409ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2928人が本棚に入れています
本棚に追加