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只今捜索中
従業員通用口から出て、直ぐ側にある駐車場に行くと、隣の薬局から出て来た、美緒さんと小松さんがこちらに気が付いて笑顔を向ける。
「三崎先生、おつかれさま!」
「三崎君、おつかれさま、帰り気を付けてね」
「おつかれさま」
ツキンと胸は痛むけど、笑顔を向けて手を振る。
安心して帰れる環境が手に入ったのは、良かったと思う。
愛車に乗り込み、駐車場から家に向けて順調に車を走らせる。途中、幹線道路沿いにある老舗の和菓子屋さんに寄って菓子折りを買い込んだ。
住宅街を走らせるとマンションが見えてきた。速度を落とし、マンションの駐車場に車を停めて降り立つと、菓子折りを持って、近所の定食屋に向かう。
さっき通った、住宅街を抜けて、幹線道路の一本裏の道にある定食屋さん。
カラカラカラと引き戸を開けると、おばちゃんがいつもの笑顔で「おかえりなさい」と迎えてくれる。
「昨日は、飲み過ぎて、ご迷惑をお掛けしました。これ、つまらないものですがよかったら召し上がってください」
と、さっき買った和菓子の菓子折りを差し出した。
「まあ、センセ、かえってすいません。繁さんが飲ませ過ぎたのがいけないんですよ。帰りは息子が送ったんですが、失礼なかったかしら? あっ、今居るので呼びましょうね」
おばちゃんの話だと、作業員風の人が繁さんで、酔い潰れた俺をおばちゃんの息子さんが送ってくれたとの事。
「歩夢、ちょっと来てくれる? 昨日、送った先生がお礼持って来て下さったのよ」
厨房に続く暖簾の先に向かって、声を掛けると奥から割烹着姿の20代半ばぐらい、ツーブロックのロン毛をサムライ結びにしたイマドキのイケメンが出てきた。
「あ、こんばんは、昨日、大丈夫でした?」
えっ、まさか、黒いヘアゴムの持ち主か?
BLか!?
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