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しばしの沈黙の後、自信なさげに瑪瑙が答えた。
「人間たちが言う、『神様』ってやつじゃない。それに、私たちが人間たちみたいになったら、きっと仕事が手につかなくなると思う。永遠の命も必要なくなってしまう。考えただけでぞっとする。……とにかく、私たちは存在意義である仕事を、全うし続けるしかない。おかしな考えに囚われて仕事を放棄した守人たちが、どんな末路をたどったか、あなただって知っているでしょう。どうしたの。ここ何年か、おかしなことばかり言っている」
「うん、もちろん知っている。ごめんなさい」
ふんと鼻を鳴らして、瑪瑙は言った。
「わかればいいけど。……私、新しい鉢を貰いに行く。あなたも一緒に行く?」
瑠璃は首を横に振った。
「私、寄りたいところがある。先に行って」
瑠璃は立ち上がり、瑪瑙に背を向けた。その背中に、瑪瑙が問いかける。
「もしかして、また、あいつに会いに行くの?」
「うん」
瑠璃の返事に、彼女はあきれ返った様子で言った。
「瑠璃。あんな、年がら年中鵞鳥のことしか考えてないようなやつの、どこをそんなに気に入ってるの? あいつ、仲間たちからすら、変わり者扱いされているらしいじゃない」
振り向きもせず、瑠璃は答えた。
「鵞鳥たちのことしか考えていないところ」
瑪瑙が、瑠璃の後ろ姿を見送ってから、眉をひそめてぽつりと言った。
「なんだか、不吉」
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