花守り人の憂鬱

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 瑠璃が隣に座ると、茜は彼女にあれこれと質問をした。そのほとんどは、彼の知らない、人間たちの世界のことについてだった。  人間の魂を迎えるため人間たちの元を訪れる瑠璃たち花守り人と違い、茜たち鵞鳥の世話番は、この小屋で鵞鳥たちの世話をするのが専らの仕事だった。そのため彼らは、生きている人間たちの生活場所へ行ったことがなく、地上のことについて何も知らないのだ。  瑠璃は問われるまま話した。答え終わると、今度は茜に質問をした。 「私、ずっと不思議で仕方ないことがある」 「何?」  彼女は、地上で仕事をするとき、自分たちが見える人間から「死神」と呼ばれ、まるで仇を見るような目を向けられることを説明した。 「私たちは……多分、きっと、人間のために仕事をしているのに、どうして人間たちは私たちのことを憎むのかな」  茜は、膝の上のリオを撫でながら、しばらくじっと考えていた。 「知らないからじゃないかな。ここに来る鵞鳥たちも、みんな『知らないもの』や『知らないこと』をとても恐れるよ。自分の中で、勝手に一番恐れていることを、その『知らない何か』に当てはめてしまうんだ」 「それだけで?」  うーん、と唸った後、茜は言った。 「人間にとって、自分や自分以外の誰かが死ぬことって、悪いことで防がないといけないことなんだって、いつかの鵞鳥が言っていた。その『悪いこと』を、誰のせいにもできないのに、耐えられないんじゃないのかな。だから、その瞬間に現れる『知らない何か』にその責任を押し付けてしまいたくなる」
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