4人が本棚に入れています
本棚に追加
「これからあの病室へ入っていって、私が目の前で仕事をするところをあの子に見られたら、きっとまた、いやなことを言われる」
「言いたいように言わせておけばいいじゃない。どうせ、私たちのやっていることの意味なんてわからないんだから」
琥珀が眉をひそめて言い放つ。先ほどよりいっそう悲しげな眼差しで、瑠璃は琥珀を見やった。
瑠璃があっと声をあげた。「私、そろそろ行かないと」
挨拶もそこそこに、瑠璃は鉢を手にしたまま目の前の病室へと駆けこんでいく。その姿が扉の向こうへ消えるのを見届けてから、仕事熱心ですこと、と琥珀がぽつりと呟いた。
「いつもいつも、作り笑いばっかり。あの子、いったいどういうとき、ほんとうに笑うんだろう」
最初のコメントを投稿しよう!