じかんどろぼう

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 うちにはどろぼうがいます。みなさんのうちにもいると思います。  どろぼうといっても、金品をぬすむわけではありません。時間をどろぼうするのです。  気づいたらあっという間に時間がたっていることってありますよね? あれはじかんどろぼうに時間をぬすまれているのです。  じかんどろぼうは、ひとの時間をうばっては、余命の短い人に売って暮らしていました。一年分で二億円という破格の安さでした。  あるとき、じかんどろぼうはカフェにいました。昼過ぎのカフェには、気を抜いた人がたくさんいるからです。じかんどろぼうが、いろんな人から少しずつ時間をぬすんでいると、大富豪に見つかってしまいました。その人は、永遠の命を手に入れるためにはお金を惜しまない人でした。  大富豪が、じかんどろぼうに言いました。 「金はいくらでもある。みんなから奪った時間を、おれだけに売ってくれないか。今までの何倍でも払うから」  じかんどろぼうはよろこんで、さっそく町中の家に忍び込みました。  スマートフォンでSNSのチェックをしている人から三時間。見たくもないテレビをぼんやり眺めている人から五時間。暇つぶし系のアプリゲームに夢中になっている人から二時間。SNSでくだらないやりとりをしている人たちから一時間ずつ。ネットサーフィンをしているうちに何を調べたかったのかわからなくなった人から四時間……次々とどろぼうしては、大富豪に買い取ってもらいました。
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