終章 運命のシュー・ア・ラ・クレーム

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 サンドイッチとおかずを食べきると、私たちはシュークリームに手を伸ばした。「当たりって何かな?」と思いながら、シュークリームに齧り付く。小振りのシュークリームは口に入れやすい大きさだ。  パリパリというよりも、ふわっとした食感のシュー皮が口の中で破れると、カスタードクリームと生クリーム、両方のクリームの味が広がった。 「ダブルクリームだ!」  子供の頃、おやつのシュークリームに二種類のクリームが入っていると、特別な気がして嬉しかったっけ。そんな思い出が蘇る。  慎さんもシュークリームを一つ摘まみ、 「美味しいな。さすがオーナー」  感心したように言った。 「当たりってなんでしょうねぇ」 「さあ? まさかわさび入りってわけじゃないだろう」  そんなことを話していたのに、 「あっ……」  二個目のシュークリームに齧り付いた途端、慎さんが変な表情を浮かべた。 「どうしたんですか?」 「当たり」だったのだろうか。一体何が入っていたのだろうと思っていると、慎さんは、 「これ、七味が入ってる」  と、淡々とした声で言った。 「えっ?」  驚いている私とは対照的に、七味シュークリームを引き当てた慎さんは、冷静な口調のまま、 「七味クリームか。オーナー、面白いこと考えるな」  と、感心している。
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