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まるで世界の秘密を打ち明けるように ✽『刺繍する少女』ほか小川洋子短編集
耳あて帽が好きなんです。季節外れですみません💦 ちょっとノーブルなものが描きたかった時の一枚です。
耳あて帽といえば、ある冬の日に身に着けて友人に会ったら「そういうのって、可愛い子だけのアイテムじゃないの?」と言われた思い出。本人的には雪国の斥候隊の気分だったのですが、伝わりませんでした……残念!
✽ひそやかさを秘めた小説の名手と言えば(イラストは雰囲気だけ意識)✽
『刺繍する少女』 小川洋子 角川文庫
『口笛の上手な白雪姫』 小川洋子 幻冬舎文庫
現実のことなのに、いつの間にか別次元に迷い込んだような語り口が小川洋子先生の作風だと思っています。学生時代によく読んでいました。
身の回りのモノが、気配が、こっそりと私に囁きかける。
まるで、世界の秘密を打ち明けるように。
言わずもがな、中間小説の名手。長編もいいですが、個人的には短編小説が持つ独特な切れ味が好みです。
ナイフで切り取った破片を、詳らかに提示される、なんとも不安な心持ちにされます。
『刺繍する少女』収録の「森の奥で燃えるもの」。深い森にある収容所で、耳からぜんまい線を引き抜かれた僕は、登録係の彼女と親しくなる。ゆっくりと流れる生活の中、収容所にある美術館のしごとを始めた僕は、ぜんまい線の行方を意識するようになる。
近年発表だと『口笛の上手な白雪姫』。
吃音の少年が黒電話(もはやアンティーク品なのでしょうか……)で時報のお姉さんと話す毎日に、あるものを回収する老婆に出会う「先回りローバ」。
大変短いですが、影のある後味を残します。憧れる作家の一人です。
✽ペコメ御礼など次項へ→
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