夏の小説めじろ押し*『山川方夫全集 決定版日本文学全集 』

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夏の小説めじろ押し*『山川方夫全集 決定版日本文学全集 』

こんにちは、未苑です。台風6号での被害が心配です……これ以上被害が大きくなりませぬように!! d5f8812f-fd9b-452e-808b-9dbceb87f9c1 夏らしい1枚に仕上げてみました。こんな風に海に行くことも無くなりましたなぁ……(遠い目)  *夏を感じる短編小説がめじろ押し* 「夏の葬列」「他人の夏」「暑くない夏」「昼の花火」「海を見る」他、たくさん 『山川方夫全集 決定版日本文学全集 』収録 山川方夫  文豪e叢書編集部 こうも毎日暑いと、夏小説が読みたいぜ! ということで〈ザ・夏〉タイトルの短編小説ばかり選んでみました。 戦後のショートショートの名手・山川方夫。こんなに夏の作品が多い作家も珍しいのでは……文学界のTUBEみたいな(笑)←違う? 国語教科書に掲載されている「夏の葬列」が有名ですよね。戦時中に疎開で世話になった村を訪れた男が、少女を見殺しにしてしまった過去を突きつけられるシーンの一節が印象的です。  "彼は、ふと、自分には夏以外の季節がなかったような気がしていた。" まるで、男を放さない過去が陽炎となり灼きつくすようです。 「他人の夏」は、オンシーズンだけ賑やかになる避暑地に住む男子中学生が、真夜中の海で美しい女に出会います。少年の達観した言葉が鋭く刺さります。  ‘’その人びとがそれぞれに生きている夏の一つ、そんな他人の夏の一つが、しだいに視野を遠ざかる‘’ また、年上の女との別れを予感させる「昼の花火」。冒頭、野球観戦のデートから始まりますがカップルの会話がなんとなく噛み合いません。去年一緒に見た花火大会で、女は言います。  “「結局、濫費の美しさね」" 女への男の気持ちが残酷なほど無邪気に変化し、消えていこうとする様は花火のよう。 終わり方には思わず己の過去と重ねてしまいました……(苦笑) どの夏も、暑さの中にひややかな〈別れ〉や〈死〉を感じさせるものばかりです。山川先生はもともと三田文学の編集者だったそうで、作品の端々に現れる冷たい視線が何とも堪りません! 早逝が悔やまれます……。 なお、夏舞台の作品だけではなく「恋愛はホラー」系のショートショートも充実しております。 誰がまともなのか分からなくなる「箱の中のあなた」「歪んだ窓」など、青空文庫でも読めるのでお薦めです♪ *ペコメへのお返事は次項へ→
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