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加害者の親族から見た世界*『食卓のない家』
いい加減パソコンを買いたい、未苑です。
皆様のエリアは台風被害ありませんでしたか? 季節の変わり目ですので、引き続きお気をつけてお過ごし下さいね。
過去絵を今回紹介の小説に合わせてリメイクしました。業火(?)に焼かれる男……。
*業火か宿命か、考えさせられる小説*
『食卓のない家』 円地文子 新潮文庫
加害者家族は、制裁を受けるべきなのか。
ヘビィな問いを投げかけずにいられなかった、『必読書150』からの1冊です。
半世紀前、日本国内を震撼させた赤軍派によるあさま山荘事件、ハイジャック事件をベースにた小説です。ここで重要なのが、その学生自身ではなく、その家族の身辺を追った「(非)日常」であること――これが想像以上にボディブローがきつく、胸を抉られました……。
鬼童子信之は大手電気メーカーの役職につくサラリーマン。国立大学に進学した大人しい性格の長男の乙彦が1年前起こした赤軍派事件によって、穏やかな生活が崩れていきます。
内部リンチや殺人などが明るみになり、世間からの非難は学生本人達だけでなく、その家族にまで及びますが、父親である信之は
「成人した子供の責任をとる必要はない」
と個人主義を貫きます。
その結果、社内でのポストを揺るがされ、お嬢様気質の妻はショックから入院、浪人中でマイペースな次男は我関せず。唯一、信之を心配してくれるのは妻の姉のみ。
そんな中、休暇として出身地の紀州に戻った際、熊野巫女の血筋である占い師に「全身に死者が取り憑りつかれている」と伝えられます。その道中、ある女子学生に出会い彼女の中に菩薩を見出した信之は……。
我が身に流れるけものの血は宿命か、それとも……?
2023年の現在だと、SNSによるリンチや私人刑罰を思わせます。過去国内で起きた残虐事件を調べると、その加害者家族はことごとく自死されているそうで、中には冤罪の場合すら……。
親族が世間で生き延びていくことの難しさは想像を絶します。
近代国家における「同調圧力・島国」日本で、個人とは何か。
改めて、法治国家とは何だろう、と考えこまずにいられませんでした。
*ペコメへのお返事は次項へ→
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