AIはヒトの幸せの鍵となるか? *『ニュートロニカのこちら側』

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AIはヒトの幸せの鍵となるか? *『ニュートロニカのこちら側』

2023年もあと3ヶ月?! 今年も焦り出しました(苦笑)未苑です。 やっと涼しくなりましたね♪ 秋の夜長、皆様の執筆と読書が捗りますように。 f576ed58-b4b2-40bd-ad60-698ddfbd0206 いつものテイストどうした?! 過去絵をデジタル加工したらこんなことになって自分でも吃驚です。刑事かテロリストなのか、サイバーパンク風に見えたら良いのですが💦  *近未来へと、ヒトの正義と自由に想いを馳せる* 『ニュートロニカのこちら側』 小川哲 ハヤカワJA文庫 前回に引き続き、国内SFです。『地図と拳』で直木賞受賞された小川先生ですが、デビュー作はまさかのハヤカワSFと知ってびっくり。 SFの種類はスペースオペラにタイムリープ、ロボット(反逆)など数あれど、こちらはディストピアもの……でしょうか。 人間の幸福度がAIによって管理されている近未来社会が舞台です。 快適な生活を保証される代わり、個人情報をすべて提供するサンフランシスコの実験都市、アガスティアリゾート。そこへ移住してきた一組の夫婦、妻のジェシカが適応するのに対し、夫のジョンは日に日に塞ぎ込むようになり……。 また、管轄区域の刑事スティーヴンソンはアガスティアのを乱す犯罪予備者を捉えようと、連日捜査にあたり家庭を顧みない。サーヴァントと呼ばれるAIの警告にそって出動するのですが、ある犯罪予備者との出会いによりアガスティアの正義を疑いはじめ……。 6作からなる連作短編集、アルカディアリゾートに関わる人々が絡み合います。サーヴァントによる24時間監視生活の中、祖父の教えでテロを起こす日本人留学生、神に懺悔を続ける者など、さまざまな思いが交錯し、いつしか個人の自由をめぐる闘争へ。 めちゃくちゃ古典ディストピアの系譜じゃないか!と勘付いた方は、本文中のこの台詞、  「ビッグ・ブラザーもオーバーロードもルイ16世もサダム・フセインもいない。守るべき大衆と、倒すべき黒幕は等号で繫がっている。」 の箇所ほくそ笑むのでは? 以前エッセイで扱ったソ連時代SF古典『われら』も彷彿とします。それら古典が当時の「全体主義」を風刺していたとすると、今作はより個人の内面を追求していました。 ヒトの幸福は管理できるのか、正義は数値化できるのか。 もしも雑念がヒトを不幸にするのなら、永遠の静寂――ニュートロニカに至ることで到達出来るのか。 そう問いかけながら読み進めていった先、自分を待っていたのは感情をのびびとストレッチさせている読者の自分自身、でした。  ✽ ちなみに今回の章タイトル、いつかやってみたかった『電気羊は〜』もじりです♪ ディックは学生時代から愛読しているのでご容赦を(笑) *ペコメへのお返事は次項へ→
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