人は他人に、〈魔法〉をかけられるのか? ✽ 『午前零時のサンドリヨン』

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人は他人に、〈魔法〉をかけられるのか? ✽ 『午前零時のサンドリヨン』

魔法があるなら、もう一度ゴールデンウィークを過ごしたい(=働きたくないw)未苑です。 連休中はちょっとした小旅行をしてきたのですが、路線バスが2時間に1本しかなくて焦りました💦 あれを乗り過ごしていたら大自然に包まれて夜を明かしたかも……💦(←弾丸旅行も程々に) 皆様はどんな連休でしたか? cfa5563a-5e0b-41a9-bd3e-276c5b9be39e マジック少女。ちなみに私はトランプ切るのがめちゃくちゃ下手です(笑)  *魔法がメインのファンタジー小説と言えば* 『午前零時のサンドリヨン』 相沢沙呼 創元推理文庫 あなたは手品のタネを知りたい派ですか? それとも、知りたくない派ですか? そんな質問をしたくなる小説です。 こちらは、ドラマ化もした2020年「このミス!」大賞作の『medium 霊媒探偵城塚翡翠』で有名な相沢先生のデビュー作で、創元ミステリの鮎川哲也賞受賞されている、王道ミステリ×学園モノです。 レストラン・バーで溌剌とマジックを披露する美少女に出会った男子高校生・須川(すがわ)。彼女がクラスメイトの酉乃初(とりのはつ)だと気付き、教室でのそっけない態度とのギャップに惹かれ、彼女を意識し始めます。 ある日の放課後、初に図書館の場所を訊かれ同行することに。 そこで二人は、ある書棚に違和感を覚えます。書籍すべてが背表紙とは逆に押し込まれている――真ん中の1冊を除いて。 「トライアンフ現象……」 初はその光景を、トランプの真ん中のカードだけ表を向いている状態のマジックに喩えます。 なぜ、1冊だけ逆さまになっていたのか? 誰の、何の目的で? 図書委員の慶永(よしなが)さんや演劇部の面々、果ては、かつて校舎から飛び降り自殺した女子生徒の幽霊まで現れて……。 マジックがトリックになるなんて!! こちらは全4話からなる連作短編で、それぞれが実際にあるトランプ・マジックに準えて話が進行します。 なんと驚いたことに相沢先生自身がマジシャンだそうで、紡がれ、解き明かされていく物語は奇術のように鮮やか。その上、〈マジックの意義〉がヒロイン・初の過去に大きく依拠しているのが面白くて、その匠の技に 「推理小説とはこうやって書くのか……」 と唸ってしまいます。  “タネ明かししてしまえば〈マジック=魔法〉には何の意味もないのか?” という問題定義が、女子高生の幽霊という〈非科学的な存在〉を有機的なものに変えていく。 謎解きが進むうちに、自身の抱える問題に直面する初を、主人公・須川が助けようとする姿勢がとにかくまっすぐで、瑞々しいです。青春ものに相応しい清らかさに満ちた作品からは、爽やかな読後感を得られます。 須川くんいい奴! 誰かを想っての行動。 それこそが人間にとっての魔法なのかも知れません――たとえ、そこにタネがあったとしても。 手品のタネを知りたい派も、知りたくない派も、小説の〈魔法〉を感じられる作品です。 📖今回ご紹介の作品はこちら→https://a.co/g1asKej ※なお、kindle unlimitedなら現在無料で読めておすすめです♪ *ペコメ下さる皆様、いつもありがとうございます✨✨ 引き続き、お返事はペコメ欄に返させて頂きました。 まとめてお返事する時間が取れず、随時のお返事となりますことご了承下さいm(_ _)m
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