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誰もが抱える苦しみは日常に潜む* 『ななつのこ』
やっと外に出られたーー! と思わず叫びたい(「君が好きだと叫びたい」風に)、未苑です。
無事にコロナ療養期間が終わりました。まだ喉が焼けるような痛み&怠さはありますが、食欲だけはありまして……。今回、
1 キ ロ も 瘦 せ な か っ た(苦笑)
いやはや、本当に健康あっての日常、幸せをかみしめるばかり。今回もお見舞いメッセージたくさんありがとうございましたm(_ _)m めちゃくちゃ励みになりました😭✨✨
猛暑日が続きますので、皆様、どうかどうかご自愛くださいね……!!!
*夏に読みたい、日常の謎解き*
『ななつのこ』 加納朋子 創元推理文庫
コロナ療養中は全く読書出来なかったので💦 過去の読書記録から。これからの季節にぴったりな〈日常の謎〉の名作中の名作です。
“夜中に盗人が出ることから、親にスイカ畑の番を任されたはやて君。寝ずの番をしたところ知らぬ間にスイカが盗まれてしまいます。悔しい想いで見つけた犯人は意外な相手で……。”
(第1話「スイカジュースの涙」より「すいかお化け」)
田舎に住む少年・はやて君を主人公にした連作短編小説『ななつのこ』の愛読者になった短大生の駒子。作者の佐伯にファンレターを書くのですが、作中に感化され、自身の身近に起きた謎を思い出します。
先日、近所で血の痕が道なりに続くという不可解な現象が起きたところ、周囲は巷で人気の〈スイカジュース〉をこぼした跡だ、と結論付けます。しかし違和感を感じる駒子は、この事件を佐伯へのファンレターによもやま話として添えることに。
すると、何と佐伯からお返事が返ってきます。しかも謎解きの答えが添えられて……!
いやー、面白い!! 何が面白いかって、連作短編それぞれの章で作中作『ななつのこ』と各章ともにミステリーが用意されているんです。つまり、2倍楽しめる。サービス精神満点です。こちらの作品で加納先生は鮎川哲也賞ご受賞、デビューされたそうですが納得です。
個人的には、3話目「一枚の写真」がぐっと来ました。
駒子の小学生時代のアルバムから1枚だけ写真が抜かれている、という話なのですが、その写真がある日郵送で突然戻ってきます。差出人は橋本さん。あまり親しかった記憶のないクラスメイトです。
いつ橋本さんは写真を盗ったのか、なぜ、長い時を経て写真を戻してきたのか……。
これがもう、動機がめちゃくちゃ切ないです……。
これに呼応する物語「空の青」でも、はやて君の友達が青色の絵の具を盗ってしまうのですが、この理由もまた胸に迫ります。
そして、〈他人からしたら意識もされない一瞬〉が〈誰かの宝物〉かも知れないことを駒子は佐伯から教えて貰います。
この関係性、以前に紹介した(これも創元推理文庫)北村薫先生の〈先生と私シリーズ〉と近いかも知れません。
どちらも20歳前後の女性主人公でメンターとなるのが〈先生〉。文通仲になった駒子と佐伯先生の謎解きには、付かず離れずの距離ゆえ許された、穏やかな絆にじんわりします。
誰にでも、人に言えない苦しみを抱えているもの。
それは自分の影のようにひっそりと付いて離れない。
光が強いほど、それは濃くなる。
〈先生〉とのささやかな会話の中で翳りをすくって貰えることが、〈問題〉を抱える私達の〈光〉となるのかもしれません。
改めて、日常の謎には得体のしれない魅力があります。私自身が〈対権力〉系のお話が得意でないせいですが💦
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*スター、ペスタ、そしてペコメありがとうございます♡
前回、絵のタッチが普段と違う点、気付いて下さって嬉しかったです!! 珍しく鉛筆ペン(※ibisペイント使用)選んだからでしょうか? 下絵が見せられないレベルでしたが何とかなって良かったです💦(苦笑)
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