蝕むモノ、抗う者

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『ぐぅっっっ!!』  化け物は唸り声を上げると切断された四肢の根本の断面から濃い紫色の粘液が蛇のように一塊になりながら動き、床に転がっていた四肢の先端の断面図に接続される。  そしてそのまま濃い紫色の粘液は縮まっていき切られた四肢は再びくっつき、それと同時に化け物は飛び上がって少女の声が聞こえたほうを向く。 「相変わらずの再生能力ね………メンドクサ………」  一方少女はけだるげなため息を吐きつつ自分の敵を見定める。その少女は小柄で金髪のショートカットをし、両耳にはピアスを付けていた。藍色の制服を着ているが中に青色のパーカーを着込み下はショートパンツに黒ストッキングを着て黒と青色のウエストポーチを左肩からかけているからか、ラフな印象を与えていた。  だがそんな印象を根っこから覆されるような物騒なものが彼女の両手には握られていた。それは、 「ま、別にいいけど。再生しようが関係ない、  何度でも、切り刻む!!」  少女はそう言い放つと、彼女の体に紫色のエネルギーラインが走り姿勢を一気に低くして化け物に向かって突撃する、  両手に一本ずつ持つ、鋭き紫色の短剣を構えて。 * 「サイカ!!おい、サイカ!!返事しろ!!クソっまた独断専行しやがって………!!」 「全く………彼女はいつになったら団体行動を覚えるのか………!!」 「まぁまぁ………サイカちゃんがこうなのはいつも通りですし………」  ここは今多くの人達が逃げ出していた駅の正面口。現在ここは警察によって封鎖され、多くの武装した警官たちが冷や汗を流し呼吸を荒くしながらもその場で待機していた。  一方、そんな極限状態の戦場のような場所において、明らかに不釣り合いな3人組が立っていた。彼らは全員上は同種の藍色の制服を着ており同じ組織に属していることがわかる  一人は無造作な黒髪をした少年で苛立った様子でサイカとよんでいる人物に携帯を何度も何度もかけていた。だが繋がる気配はまったくなく、彼の苛立ちは募っていた。  二人目はつややかな黒髪をサイドブロック状に刈り上げている背の高い青年で、少年の電話に出ないサイカと呼ばれた人物に呆れているのか頭痛を抑えるように額に手を当てていた。  三人目はウサギの耳をおもわせる黒いリボンを付け茶髪のボブカットをした少女でサイカと呼ばれる人物に対し怒りや呆れを抱く男二人に対しフォローを入れていた。  どう見ても三人とも歳は20を超えておらず、今封鎖されているこの場でいる人物の中で最も若いのは明らかで、更に自分たちの視線の先にある駅いるであろう化け物に対しても恐怖心を一切持っていなかった。 「チッ、サイカのことだ。そう簡単には負けはしないだろうが万が一はある。  しょうがねえ!!ケイイチ!!ネネ!!行くぞっ!!」 「ええ、もちろんです」 「分かりました!!シロウ先輩!!」  シロウと呼ばれた少年は青年と少女、ケイイチとネネとよんだ二人に声をかけて駅へと一気に走り、またそれに続くようにケイイチとネネも走っていく。  そんな彼らの手には、いつの間にか紫色の武器が握られていた。
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