蝕むモノ、抗う者

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*  場面は駅構内で戦う金髪の少女と化け物へと戻るが、その戦いの趨勢は目を見て明らかであった。  狼をもした巨大な化け物は一心不乱に大口を開き、少女に噛みつこうと突進を繰り返すが、少女は一切表情を変えることなく冷静に躱していく。それだけではない、攻撃を躱した少女の体に再び紫色のエネルギーラインが走ると構内の壁に向かって走り出す。彼女はそのままに壁に足を踏みつけると凄まじい勢いで今度は天井へと飛び上がる。  化け物もそれに反応ようと目玉を上へと向けるが、もうすでに天井には誰もおらずブーツの踏み跡が残っているだけであった。さっきの少女はどこに?とでも言うかのようにもう一度化け物が首を動かした、その時であった。  シャリン、シャリンシャリンシャリンシャリンシャリンシャリンッッ!!!  初めに聞こえたあの風切り音が先程よりも連続した速度で聞こえてきたのだ。その音に注意しながらも化け物は敵を探すと、いつの間にか件の少女は懐近くにまで入っていたのだ。  化け物はそれを迎撃しようと自分の前足を振り上げようとしたが、その瞬間化け物の視界は急にズレる。あまりにも異常な状態に奴自身絶句するしか無く前足を振り上げた状態で停止してしまう。  少女はゆっくりと息を吐くと動きを止めている化け物に体を向き直し、その体をぽんを軽く蹴る。すると、途端に化け物の体に無数の線が入り始め、奴の肉体はバラバラに駅の床に巻き散らかされてしまったのだ。 「流石にここまでバラバラにすれば再生能力がいくらあろうが関係ないでしょ。  さ、いい加減出てきたら?バレてんのよ」  少女はすでに体が溶けかかっている化け物には目もくれず駅構内の奥の柱に対し話しかける。そこからは何の声も聞こえず何もいないように思えたが少女は自分の右手に持っていた紫色の短剣を構えるとそれを野球投げで思いっきり柱に向かって投げつける。  投げられた短剣は刃が風を切りながらまっすぐ飛び、奥の柱に突き刺さると柱に無数のひび割れを入れそのまま貫通した。貫通した場所は成人男性程度なら頭部が位置する場所である、本来ならば血しぶきが吹き上がってもおかしくないが、  バチッ!!グシャッ!!  血しぶきが上がる音の代わりに短剣が掴まれた音、そしてが鳴る。柱の後ろにいた人物は自分の手でグシャグシャにした短剣を投げ捨てると、ゆっくりと柱から前に出て少女に相対する。  その人物は少女と特に年齢は変わらないように見える少年で色が抜けた灰色の髪に色素の薄い肌、その体の色とは対象的に派手派手しい黄色と黒色の服を身にまとっていた。だがそんな特徴的な容貌すら彼の最大の特徴の前では霞んでしまう。なぜならば、  彼の両腕には取り付けてあったからだ、少女が持っている短剣と同じ色合い、濃い紫色一色でできた手甲が。 「貴様………たとえ適応者(ドラッグス)であろうとも今の攻撃、  俺じゃなければ死んでたぞ?」
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