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「用はあるか」
「ございます。少し前に女の子が川を渡りました。その子を助けたいのです」
「助けるとは何か」
「あの子をもとの生活に戻してあげたいのです」
「あの者の国はかつて私を拒絶した。次は私が拒絶するのが理である」
魔女とは世界と同義だ。何故その国はそのような暴挙にでたのだろうと僕は混乱した。ひょっとしたらあの子の国ではあまり魔法がないのかもしれない。魔女と世界についてあまり知らないのかもしれない。旅人にそんな国もあると聞いたことがあった。
「私はあの子の国の者ではありません。私の願いで交換したく存じます」
「何を差し出すのか」
困った。あの子の国がこの魔女に何をしたのかわからない。釣り合うものが測れない。
「私で釣り合いはとれるでしょうか」
「1年ほどであれば相当であろう」
僕の命は少女の命の1年分相当。
1年経てば、少女は世界に拒絶される。
「何か方法はないでしょうか。あの子を不幸にしたくはないのです」
「不幸とは何か」
「私はあの子が世界に拒絶されるのは嫌なのです。あの子にこのまま笑って暮らして欲しいのです」
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