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魔女は世界の理に触れ、それを行使するもの。あの子は世界に導かれて自ら魔女の領土に足を踏み入れた。そうである以上、負債を支払わずここを出るのは均衡が取れない。
あの子は何も知らなかったのだろうけど、世界にとっては知らないことなんて何の言い訳にもならない。
僕は対価を払って魔女の下までやってきた。だから魔女は対価に見合う時間を僕に支払う義務がある。
魔女は対価の衡平性について頭を巡らせた。
「では私の仕事をそなたに依頼しよう。それで対価に満ちるだろう」
僕と同じ16歳になるまであの子は生き、僕が行使する茨の魔法によって城ごと時をとめて凍りつく。対価として魔女は時を受け取り、その価値が等しく満ちた後、あの子と城の時は再び動き出し、その運命に従って理どおり生命を終える。
呪いになればもう人には戻れない。けれども僕は一も二もなく同意した。僕は魔法となり、世界との橋渡しを行い、あの子をこの世界に繋ぎ止める茨となる。魔女は僕にに茨の種を埋め込んだ。
一瞬、この居城に来るまでの痛みを想像したけど、種はするりと僕の胸骨をすり抜けて心臓に根付いた。僕とあの子と世界を繋ぐ茨の魔法。
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