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魔法は果たされ、城は眠りについた。僕は魔法を維持するために地中で身を潜める。呼吸するたびに喉に絡まる茨が刺さる。風が吹くたび茨が揺れて血が吹き出る。けれども僕に後悔はなかった。
僕は魔法と同化して、魔法が行使される城の中を眺めた。たくさんの人が日々の姿のまま時を奪われ、動きを止めた。既に魔女の姿はないけれど、あの子も尖塔で針が刺さった姿のまま動きを止めた。随分久しぶりに見たあの子の姿は記憶より随分大きく美しくなっていて、女性っぽさを増していた。
城は時を止め、この国は魔女に呪われたと噂がたった。豊かだった街はだんだんと寂れ、人がいなくなって砂にかえった。時折城の中に財宝が眠っているという噂が立ち、野盗やどこかの国の兵士が攻め寄せてきたが、僕は茨を増やして城を守った。いつしか僕から生える茨は数を増やして、もともと街があった範囲くらいまでその外縁を延ばした。あの魔女の領土にあった茨の森のように。
ひょっとしたらあの魔女も僕と同じように茨を生やしているのかもしれない。そう思うと、僕の痛みは少し軽減された。もうあの魔女に会うことはないのだろうけれど。
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