ハチとハナ

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

ハチとハナ

むかし、むかし,大きな山の麓の森に,ハチという小さな妖精が住んでいました。ハチには、身内と呼べる者はいませんでしたが、ハナという仲の良い友達がいました。 ハチとハナは,ある春の日差しの暖かい日に出会い,友達になってから,毎日,日が暮れるまで,一緒に遊んで過ごしました。 最初ハチと同じぐらい小さかったハナは,グングンと大きくなっていきました。葉っぱも沢山つけて,枝が長く伸びました。 あんなに小さかったハナが立派な木に成長し,ハチは,喜びました。 しかし,夏が終わり,木枯らしが吹くようになると,大きな木になっていたハナは,どんどん元気がなくなっていきました。せっかくつけた葉っぱも,全部枯れてしまい,強い風が吹くと,地面に散ってしまいました。 ハチは,友達のハナの様子を見て,心配になりました。しかし,水をやっても,肥料を撒いても,ハナは,少しも回復しませんでした。それどころか,だんだん痩せて,ますます元気がなくなっていくばかりでした。 ハナは,ハチが遊びに来ても,前みたいに一緒にはしゃいだり,お喋りをしたりする元気もなく,ほとんど寝ているような状態になってしまいました。ハチは,ハナの活気のない姿を見ると、悲しくなり,涙を流しました。しかし,ハチが泣いても,ハナは慰めてくれませんでした。静かに寝ているだけでした。 初雪が降った日に,ハチは,ハナの様子が気になり,お見舞いに行きました。ところが,ハナは,ハチが来ても,全く反応しませんでした。ハチは,ハナがとうとう死んでしまったのだと思い,激しく涙を流しました。 ハチは,寒くて長い冬をひとりぼっちで,寂しく越しました。ハナが死んでしまった冬は,これまでのどの冬よりも長くて,寒く感じました。ハチは,今年は,春が来ないのではないか?と思ったほどでした。 しかし,春がいつも通りやって来ました。ところが、外が暖かくなり,春めいても、ハチの気分は少しも晴れませんでした。 それでも、ずっと家に籠るわけにはいかないと思い,ある日、お散歩に出かけました。 ハナの木があったところに近づいてみると,目が丸くなりました。 ハナは,初雪の日に最後に見た姿とは打って変わり,元気溌溂で,いつからか蕾を沢山つけて,花を咲かせているではありませんか!? ハナは,華やかな笑顔で,友達のハチを出迎え,前のように,一緒に遊びながら,笑って過ごしました。 やがて日が暮れ,ハチがそろそろ家に帰る時間になりました。 ハチは,帰る前に,ハナに,元気がないことを心配し,死んでしまったと思い、泣いていたことを話してみると,ハナは,笑って言いました。 「花を開くためには,一度枯れなければならないよ。」 ハチとハナは,その後も,ずっと仲良しでした。ハナは,その後も,毎年,冬になると,葉っぱが枯れ,眠ってしまったけれど,ハチは,また春に再会できると信じ,もう心配し,涙を流すようなことはありませんでした。 終
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!