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第七章
「それで、そのかなり小柄なカラスってそんなに可愛かったの?」
「そやねん、これまでカラスが可愛いなんて想像したことも無かったけど・・大きい奴を見てしまうと、小さいというだけで可愛く見えてしまうねん・・なんで?・・なんでそんな何遍も同んなじこと訊くねんな?」
「お尻フリフリって、お父さんが話すから、ついガニー君のことを思い出しただけ!」
ガニーとは、子供が公園から拾ってきた捨て猫のことで、階段を上がるその後ろ姿がガリ股でお尻フリフリしていたところから、あっガリマタや・・いやガニマタ・・そしてガニー君と命名したのが、四年前に東北に嫁いでいった娘である。
皮肉なことに二年前のお正月に、最後までなつくことが無かった私に看取られ17歳で灰になってしまった。
「何でカラスの話からガニー君の話になるねるんや?・・お前、まさか?・・」
「まさか?って、まさかって何やの?」
「その小柄なカラスをうちで飼うなんて言わんよな⁉」
「そんなアホな、カラス飼う人なんかこの世に居る筈ないやろ! お父さんこそ何やのん、あれだけ容疑者扱いしていたのに、今朝になっていきなりカラスが可愛いやなんて・・」
・・・・
可愛いと言えば、毎年夏の終わりになると、お向かい屋根の上に多くのツバメ達が集まって来ます。最初のそれには気づかなかったのだが、近年私なりに狂言を創りました。
一つの巣で四羽が巣立ったとして、三つの巣の数を掛けると十二羽、一つの巣でシーズン二回の巣立ちが居所帯だけ有ったとすれば十二羽+四羽で十六羽の成鳥の数になる。それに親鳥の六羽を加算すると二十二羽、つまり数合わせの論理で、彼らの正体はウチの階段通路の店子だったツバメであり、別れの挨拶にわざわざ来ているとその想定が成り立つたのであった。
―完―
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