トークイベント作戦

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 はちが書店に大物作家がやって来た。紺色のジャケットからは、その風格が漂っている。  宮岡賢吾。  今年五十歳を迎えるベテランミステリー作家だ。 「本当に来てくださるなんて……あ、あ、ありがとうございます」  絵麻は震えながら握手を求めた。 「いえ。僕もこの街の出身ですし。それに、花松絵麻さん、あなたの熱意に打たれました」  宮岡さんは絵麻の手を握ってくれた。 「とんでもありません」 「僕の作品をすべて読んでくれて、しかもぜんぶに感想の手紙を送ってくれるなんて。こんなに嬉しいことはありませんよ」  イベントは大盛況に終わった。  一日三部構成で行われ、総客数は二百人を越えた。はちが書店が沸いた。活気づいた。  さらに勢いが増したのは、宮岡さんが他の作家さんや著名人を連れてきてくれたことだ。  翌週の土日もイベントを行い、サイン会には店の外に溢れるほどに客列が伸びていた。
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