トークイベント作戦

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 二月を過ぎる頃には、わずかながら売上が上がっていった。順調だ。  絵麻は憎き影山くんに、 「絶対にあきらめないかんねーだ!」  歯をむき出していってやった。 「ハチドリみたいな女だな」  影山くんは端末をいじりなが返事をした。 「ハチドリ……? なによそれ」 「本が好きなのに、ハチドリの一滴(ひとしずく)も知らないのか」 「知らないものは仕方ないでしょ」 「ま、幸運を祈るよ」 「ええ、見てなさい。はちが書店をもっと繁盛させてやるんだから」  だが、その一週間後だった。  はちが書店にて、 「やられたわ……」  セッちゃんの顔色がおかしい。 「どうしたの?」  絵馬はセッちゃんに尋ねた。 「大量盗難だよ……」 「えっ!?」  つまりは、万引きだった。  漫画コーナーの棚から、一部のコミックがごっそり姿を消していた。映画化され、社会現象にまでなった大人気漫画『悪印の騎士』のコミックだ。  すぐに発注するも、またもや盗難にあった。  セッちゃんが苦悶の表情で、冬の空を見上げていた。たそがれに溶けるひとひらの雪が哀しく舞った。
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