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誰もいない朝の教室で、絵麻は机に向かってため息をこぼした。
浅くかけた椅子からズルズルとすべり落ちそうだ。
体勢を整えるのと同時に、人の気配を感じた。
「どうした、元気ないじゃないか」
影山くんだった。
「べっ……別にそんなことないもん」
絵麻は朝日を浴びるグランドに目をそらした。
「どうせ壁にぶち当たったんだろ」
「そんなこと……ない……もん」
絵麻の語気はしぼんでいく。
「もう諦めるのか?」
「諦めるわけないでしょ」
「で、何があったんだ」
「万引きよ、万引き」
絵麻は事情を説明した。
「なるほどね。チャンス到来だな」
「はぁーー!? あんたバカにしてんの」
絵麻は思わず立ち上がった。影山くんを見下ろしながら声をあげる。
「あのね、万引きは書店にとって大打撃なのよ。書店だけじゃない。スーパーやコンビニだって、万引きのせいで潰れるお店があるんだからね! 何がチャンスよ、ばかばーか!」
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