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影山くんの目が点になった。
「こわ」
「あ、ごめんなさい……」
絵麻は背中を丸めて座った。
「ぼくは君のことをバカになんかしていないよ」
影山くんの顔に冗談めいたものはなかった。
「だったらどういう意味よ」
「万引きにあって壊滅的な状況なんだろう」
「そうよ。店の経営に支障をきたすぐらいね」
「だったら、それを売ってみたらどうだ」
「は? それを売る」
絵麻は首をかしげて、彼のインテリぶった生意気な横顔を見つめた。
それを売る、とは一体どういう意味なんだろう。疑問符の嵐がメリーゴーランドのように頭のまわりを回った。ホームルームのあと、高木くんにも相談してみたが、彼も眉間に皺を寄せていた。
――とにかく今できることを精一杯やろう。
絵麻は高木くんと街に出て、書店のチラシを配った。寒空の下、かじかむ手をこらえながらチラシ配りに精を出した。
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