閉店のお知らせ

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絵麻は唇を結んだ。扉を開けて中へ入った。小さな書店特有のあたたかい紙の匂いが伝ってくる。無言の優しさとAMラジオから流れるざらついた音楽が、絵麻の心をそっとなでた。 「あら、絵麻ちゃん。いらっしゃい」  レジの向こうにセッちゃんがいた。  店主の蜂賀せつ子。小さい頃からこの本屋に通っているので、絵麻はセッちゃんと呼んでいる。 「閉店なんて、ウソだよね? 変な冗談やめてよ」 「お客が来ないと商売ってのはダメになるの。それが世の常なのさ」 「ヤダ、ヤダ、ヤダ!」 「四月には大学生になるんだろう。そんな子供みたいに泣かないの」
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