文化祭作戦

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「そんな……ウソよ……」  焼け落ちていくはちが書店。闇にはぜる無惨な光景だった。隣家の火災が燃え移り、火事となったらしい。幸いセッちゃんは別宅にいたため無事ではあったが、書店は跡形もないほどに崩壊した。絶え間ない消防車のサイレンが、絵麻の正気を奪っていた。  数日後、絵麻とセッちゃんは商店街の喫茶店で落ち合った。 「絵麻ちゃん。いろいろとありがとう」  セッちゃんが頭を落とした。 「わたしは何も……」 「はちが書店のためにあれこれと頑張ってくれたんだよね。嬉しいわ。もう思い残すことはない」 「セッちゃん……」  絵麻はセッちゃんの小さな手を握った。昭和という時代を生き抜き、令和の今を生きる先輩の手には不思議なあたたかさがあった。この手が、はちが書店を守り抜いてきたのだ。
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