マスコットキャラクター作戦

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三日後――。 「すごい! すごいよ、高木くん」  絵麻は飛び跳ねた。  高木くんが描いてくれたイラストのクオリティーが想像の百倍もすごかったのだ。 「そんな喜んでくれるなんて。へへ」  高木くんは照れかくしの八重歯を光らせた。 『ハチビーくん』  愛くるしいミツバチがウインクしている。  それが高木くんがデザインしたキャラクターだ。  店主、蜂賀せつ子の“蜂”をとって、ミツバチのキャラクターを作りあげたようだ。 「高木くん、本当にありがとう! お代は……今度のバイト代が入るまで待ってて」 「いらないよ」  高木くんは胸の前で手を振る。 「いやいやダメダメ。クラスメイトだからって、こういうことはいい加減にしたくない」 「ちがうよ」 「ちがう……って?」 「ぼくも、はちが書店の存続に協力したい」  クラスメイトの力強い言葉に、絵麻の胸に熱いものが込み上げた。  マスコットキャラクター作戦は順調に効果を得ていった。ハチビーくん目当ててで来店する学生が増えたのだ。さらにハチビーくんの限定デザインのポストカードを作り、SNSのアカウントを開設して、少しずつはちが書店の認知度を増やしていった。  だが、 「くだらないな」  隣の席に座る影山くんが、冷めた声でいった。
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