マスコットキャラクター作戦

6/6
前へ
/30ページ
次へ
「なんか文句でもあるの」  絵麻は影山くんの銀フレームのメガネをにらんだ。 「文句なんかないよ。ただ、どんなにもがこうが、時代の波には逆らえない。それだけだよ」 「やってみなきゃ分からないでしょ」 「今どき個人経営の書店がやっていけるほど甘くないんだよ。みんな電子書籍か通販だ。君だって、買いものは通販が多くなったろ」 「それは……」  いい淀む絵麻に、影山くんは鼻で笑った。  影山くんは転校生だ。都会から来た。  高校生ながら天才エンジニアと呼ばれているらしい。テクノロジーの申し子、と、ビジネス雑誌でも取り上げられ、その界隈では知らない人がいないという。 「ま、せいぜいがんばってくれ」  影山くんは絵麻に目をくれず、端末を操作しだした。  もっとアイデアを出さなければ……  絵麻は奥歯を噛んで立ち上がった。  はちが書店を盛り上げるには何をすればいいのだろう。考える。ひたすら考える。脳内がぐずぐずと沸騰していくのを感じる。  放課後になると、高木くんが目を輝かせながら絵麻のもとへやって来た。 「今度ショッピングセンターに、てるてる坊主が来るらしいぞ」  てるてる坊主は人気お笑いコンビだ。一般のサラリーマン二人が、プロの漫才コンテストで優勝し一躍有名になった。 「ふぅーん」  絵麻は上の空だった。 「ふぅーんってなんだよ。こんな田舎にてるてる坊主が来るなんてスゴくね? クラスみんなで行くみたいだぞ」 「それどころじゃないんだよ。わたしはさ、はちが書店の……あっ」 「ん?」 「そうか……」  頭の中で何かがスパークした。 「なるほど!!」 「おい、どーした花松」 「そっか、呼べばいいんだ」  絵麻はこの地元出身の作家さんに片っぱしから手紙を送った。作品をすべて読み漁り、感想を丁寧にしたためて。  その真の目的は――
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加