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「ずっとという言葉に保証はありません」
儚い背中を僕に向けて彼女は言う。
「だけど人は、その三文字に対して時にこの上ない喜びを覚えることがあります」
夕焼けを眺めながら馳せるように彼女は諭す。
「確証がないからこそ、その言葉は輝きます」
彼女の背中越しに見える夕焼け色の空がその三文字の真髄を表しているようだ。
「ずっとを添えられた相手はとても嬉しく思います。私もそうでした。貴方はそんな経験ありますか?」
視線を向けないままに問いかけられ、戸惑いながら返す。
「あるよ…一応」
彼女の眼中には映らない僕が返すと彼女は「へぇ」と関心の言葉を漏らす。
「幸せでしたか?」
「うん」
「満足でしたか?」
「それは…分からない」
彼女に有耶無耶に返す。満足してしまったら何かがダメだと叫んだからだ。
「私も幸せでした。『ずっと』と言って貰えて。だけれど…」
含みのある言葉を残して言葉を濁らせた彼女にオウム返しをして言葉を促した。
「…私は傷ついた。深く、深く。その三文字によって一瞬で。『ずっと』と約束したのに、あの人は破りました。一人取り残された私は酷く苦しんだんです 」
「…うん」
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