寄り添う君の猫でありたい

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その日、主人は客人を帰した。 主人は一人になると、手すりのある椅子にボスっと力なく座って、机に突っ伏した。肩を大きく揺らしている。 …震えてる。 これは…臭いだ。 僕は瞬時に察知して、特等席から飛び降りた。優雅な足取りで主人の足元まで近づいてみる。だけど気づかれない。これは想定内。 「…にゃあ」 一声あげてみた。 声は届いているはずだが、見向きもしない。 せっかくの粋な計らいを無下にするとは酷いにゃ。 仕方ないにゃあ…。 僕はぴょこんと大きな机に飛び乗り主人の前で行儀よく背筋を伸ばしてちょこんと座る。 しっぽを上下にバタバタさせながらもう一声鳴いてみた。 「…何、ムギ。遊ぶのはまた後にして…」 涙声で言う主人は本当に鈍い。
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