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次の日の昼下がり。
中心街の大通りでは、忙しく行き交う車たちが走り抜けていく。
2車線にまたがる道路の端で、ハザードを点滅させながら停車している一台の車があった。
その助手席の窓が開いており、そこから大胆にも黒革ズボンの大きな長い足先が飛び出している。
辺りの街中では、車の走り去っていく音や、どこかでクラクションも聞こえていた。
そんな時、徐《おもむろ》に、その車の助手席窓から、今度は長い腕が出てくる。
その手にはタバコが握られており、中の人物が、ぷはっ〜と外へと煙を吐いた。
助手席を倒して、憂鬱気味に過ごしていたのは、刑事の松田である。
相変わらずの黒いライダースジャケットを着込んでいた。
本来ゆったりと座れるはずの豪華なシートは、その体の大きさのせいで、小さくなって押し潰されている。
松田の瞳には、傍に立ち並ぶビルの隙間から見える空が映っていた。
突然、ガチャリと運転席側のドアが開き、江戸川が乗り込んでくる。
「いや〜! やっぱりダメでしたね!」
残念そうな声で報告しながら、運転席のシートに座り込んだ。
そして助手席のシートを起こした松田が、彫りの深い顔を向ける。
頭がもう少しで、車の天井に付きそうだ。
「やっぱり、手がかりは難しいか・・。」
「ここも、過去に繋がりあるヤツでしたから期待してたんですが、もう何年間も連絡とってないみたいで。」
江戸川のその捜査情報を聞きながら、松田はドリンクホルダーの缶コーヒーを手に取った。
「くそっ! あいつらがヘマするから、こんな事に・・。」
そして、コーヒーを喉へと注ぐ。
今度は江戸川が缶コーヒーを開けながら話した。
「まあ仕方ないかもしれませんね。皆川勇次を乗せた護送バスが、検察庁に着く途中で数名の仲間に襲撃を受けたんですから・・。」
「仕方ないとかあるか‼︎ 重大問題だぞ! 皆川は暴力団組織の一員で、凶悪犯なんだ! 皆川が逃げた事で、手がかりを失った事よりも、次の被害者が出る事を心配してるんだ!」
松田は怖い顔で、威勢よく怒鳴りつけてくる。
「あ、そうでした。松田さん。すいません。」
謝る江戸川。
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