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僕だって好きで人の家に盗みに入っているわけではないんだ。そうやって自分に言い聞かせる。
半年ほど前に、勤めていた会社を突然クビになった。再就職先もすぐには見つからず、しばらくは貯金を切り崩して生活していたのだが、まだ社会人生活3年程度の僕に長期間生活ができるようなお金もなく、すぐに貯金は尽きてしまった。ついにはまともに食事もできない状況に陥ってしまい、最後の手段として盗みをするくらいしか、生きていく術がなかったのだ。
とはいえ、あまり大金を盗むのも気が引けてしまうので、1週間分の食費として、1万円札を1枚拝借させてもらった。この家の住人には申し訳ないが、背に腹はかえられなかった。
「とりあえずこのまま家を出たら無事に任務遂行ってとこか」
そんなことを考えながら、部屋から去ろうとしていると、突然廊下から足音が聞こえてきた。
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