4

1/1
前へ
/7ページ
次へ

4

「じゃあ次、俺いきまーす!」  そう宣言して立ち上がったのは清水先輩だ。主任が「オレの仇を取ってくれー!」とマイクを渡す。  私はからおけねこに話しかけるのをやめた。実は清水先輩が歌うのを私はとても楽しみにしていた。というのも、社内でも清水先輩は歌がうまいと評判だったのだ。「点数もずば抜けてすごいんだから」と女性の先輩が嬉しそうに教えてくれたので、いつか清水先輩の歌を聴きたいと思っていた。 「よし」  先輩はマイクを構えた。その立ち姿がもうかっこいい。  先輩が選んだのはドラマの主題歌にもなったバラードだった。その選曲がもうかっこいい。  そして、曲が始まる。  …………あれ?  思っていたほどではなかった。いや下手というわけではないが、特段上手いわけでもない。  私は不思議に思っているうちに、清水先輩は歌い終えた。 「おんてい15てん! ひょうげんりょく12てん! ろんぐとーん17てん! あんていせい14てん! りずむ13てん! びぶらーとぼーなすとくてん1てん! こうにゅうしゃとくてん16てん! ごうけい88てん!」  「よっしゃー88点!」 「おおお! さすが清水! 仇を取ってくれてありがとう!!」  いやまてまてまて! なに最後の購入者特典って! ぜんぶ平仮名だからって騙されないからね⁉ 「うつくしいうたごえにききほれました。なんどでもききたいくらいです。またのごりようおまちしております」  ねこの商売戦略だ! これがねこのやり方か! 社会ってこわい!
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加