アラサー処女が女性向け風俗にハマって借金沼になった話

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「なんだ別れたの?」 「ん?うん。まあね」 駅前のチェーン店のカフェで、私は隣に座った友人の佐々木から冷たい視線を向けられていた。高めの椅子は座り心地が悪くて、足をプラプラと揺らす。 「でも一ヶ月に一回しか会ってなくて、連絡も全然とってなかったんなら別れて正解なんじゃないの?それって完全に相手のこと好きじゃないでしょ」 「そもそも好きじゃなかったら付き合わないし。なのに何で付き合ってからもそんなに好き好き言い合わないといけないの?なんの確認なの?一回言えば十分でしょ」 手元に置いていたキャラメルマキアートをマドラーでかき混ぜながら、昨日の苛立ちがまた湧き上がってくるのを感じる。佐々木は最近暑くなってきたせいなのか、肩の部分がシースルーになっている服をパタパタと扇いだ。 「私はメールとか電話とか毎日したいし、好きって言われると安心するけど。河ちゃんはさ、そういう男みたいな考え方やめた方がいいんじゃない?」 河ちゃんというのは私の名前の、河合奏(かわい かなで)の苗字からとった安直なあだ名だ。社会人になってからは職場でこの名前を呼ぶのは、学生時代からの友人の佐々木くらいしかいなかった。 「男みたいって言うよりは、合理的って言ってほしいところだけど。毎日連絡する位なら、漫画読んだり動画みたりして時間潰してる方が時間の使い方として有意義だし」 「その気持ちも分からなくもないけどさ、やっぱり恋愛したいならコミュニケーションは大切にしないとじゃん?」 話しながらスマホの画面をニヤニヤしながら見つめている佐々木を、じどーっと陰険な視線で見つめる。きっと彼氏からの連絡なのだろう。よくもまあ、振られたばかりの友達の前でそんなデレデレした顔が出来るものだ。 「あ、なに、もしかして今日デート?」 何となしに聞いてみると、佐々木は更に緩んだ顔で頷く。そういえばいつもよりスカートのフリル多めだし、化粧も気合いが入っているようにみえる。 それに比べて自分の格好を見下ろすと、オーバーサイズのパーカーに黒のスキニーといった、完全なる手抜きスタイルだった。 「彼氏がさ、あんまり露出が多い服好きじゃないみたいでさ。この前洋服選んでもらったから、今日はそれ着てきたんだ」 「へえ、そうなんだ」 飛び出た返答は想像以上に素っ気なかったが、佐々木は気にした様子もなくニコニコしていた。全身で幸せオーラを醸している彼女は、今の陰の気をまとった私には目が潰れるほどに眩しく見えた。
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