アラサー処女が女性向け風俗にハマって借金沼になった話

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夕方頃、佐々木は言っていた通り颯爽と彼氏の元へと羽ばたいて行った。文字通り今にも浮き上がりそうな足取りに、途中で転んでしまわないか心配になるほどだ。 帰宅ラッシュが始まりかけている駅前ロータリーで、ひとり寂しく置いていかれた私はとりあえず目的もなく歩き出す。すれ違う人たちはみんな手元のスマホや、どこか虚ろな視線を歩く先に向けている。 きっと自分も周りから見れば同じように見えているのだろう。 覇気も生気もないその集団はまるでひとつの生き物の様に蠢きながら、家路へとついて行く。 『えー、私もだいすきだよ』 ふと自分の後ろを歩いている若い女性が砂糖を吐きそうなくらい甘い声で電話をしているのに気が付いて顔をしかめる。先ほど佐々木に言った通り私はあの、だいすきとか、あいしてる、とかの類の言葉が虫唾が走るほど苦手だ。 言葉でしか確認できない愛っていうのは薄っぺらい気がしてならない。というより愛とか恋って何だろう。 相手に会えなくて寂しいとか、ずっと相手の声を聞いていたいとか、それこそセックスがしたいとか、人それぞれきっと相手に願っていることは違うのに大きく愛って括りでおさまりきる感情なのだろうか。 悶々と考えているといつの間にか自宅の最寄りまで行くバス停を通り越してしまっており、私はこんな馬鹿らしいことに真剣に頭を悩ませていたことにため息を吐いた。
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