2人が本棚に入れています
本棚に追加
じき待ちに待った愛しい人が帰ってくるだろう。
兄の親友で、私の婚約者。
2人とも数年前に出兵した。
戦地からの便りが届く度、胸が締めつけられた。
忌まわしい内容でないかドキドキした。
封を切れば、私への想いがあふれた文面。
何度も何度も読み返し、切なくなった。
同じように戦争に行った若者達も続々と帰郷している。
兄達ももうすぐの筈だ。
我が家へ続く道に車の音がする度、朝から私は身を乗り出して窓の外の眺める。
先日母にたしなめられた胸が大きく開いたサマードレス。
彼を思って持て余した女の軀を包みこむ。
無事を知らせに我が家に彼が来たら私を一目見て、熱い抱擁を交わしキスの雨を降らせ、父と母に隠れ私にむしゃぶりつくだろう。
兄達の帰りをいち早く知る為に、今日も朝早くから両親は港に行っている。
兵士を乗せ帰還する船の情報を集めてる。
私の、私達家族の留守番も後わずかだと祈りながら。
(完)
最初のコメントを投稿しよう!