実家に封印していたポエムを熟読されたので死にました

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 その朝、いつものように母からLINEが来た。 『おはよう』  立て続けに手のひらで軽快な音を立てたそれを見下ろし、私は思い切り二度見をした。 『ちーちゃんの本棚、パパの部屋に移しました』 「……は?」  なんでも、本が溢れ返っていて手頃な棚が欲しくなり、私の小さなそれを父の部屋へ移したのだと言う。 『嫌だ』と間髪入れずに返すも『もう移しました』ときたので、愕然とした。 『入ってた本はこっちで中身見て処分しちゃうね』  その言葉に、ぞわりと背中を冷たいものが走った。 『そのまま置いといて。それか、中身は見ずに全部捨てて』  そう素っ気なく返した私は、切実に祈っていた。頼むから触れてくれるな。もしくは何も見ずに捨ててくれ。そこには私が中高六年間書き連ねてきたポエムがあった。   そいつは、今でいうスマホの中身と同等だ。例えるならば画像や検索履歴なのだ。  ……最悪だ。最悪なことが起きた。
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