この手を離さないように…

13/25
209人が本棚に入れています
本棚に追加
/175ページ
俺が座る席の隣に来るなりパソコンを覗きこんできたかと思えば『なんだよ、全然進んでねーじゃん』なんて余計な一言を言われ、強引に新多(自分)の方へ画面を持っていかれた。 言われなくても俺だって仕事に集中したい。 それが出来ないから今こうして悩んでいるんだ。 「然、俺に文句言っても仕方ねーぞ」 こっちの顔なんて一切見ずに キーボードをカタカタと器用に打ちながら 見透かすような言い草。 「まだ何も言ってないだろ」 「お前と何年の付き合いだと思っているんだよ。  言いたそうに凝視されればわかるって。」 長い付き合いだと そんなテレパシーまで使えるようになるのだろうか。 『よし、これで完了』と軽やかにEnterキーを押し パソコンを元に戻しながら新多は俺に言う。 「別に先の事なんて考えたって仕方ねーだろ。  大変なときはお互い支え合えば良いわけだし  ぶつかったら話合えば良い。  お前は深く考えすぎ。  好きなら一緒にいろよ」 他人事みたいに軽く言ってくれるけど そういうわけにもいかないんだ。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!