この手を離さないように…

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「じゃ、じゃぁ…行くね?」 「あ、うん…気をつけて」 『ありがとう』とお礼を伝え靴を履いたら 彼が支えてくれてる扉からキャリーケースを引きずりながら、外に一歩踏み出す。 そのままエレベーターへと歩き始め 途中、足を止めて振り返った。 最後に一度だけ精一杯の作り笑いをしながら 胸元で控えめに小さく手を振ると、彼は軽く会釈する。 それが別れのサイン。 私は振り返る事もなく この場をあとにした。 今思えば呆気なかった気がする。 意外と最後は義務的に終わったわけだし 仕事上の付き合いって、そんなもんかって割り切れる。 高々にそびえ立つマンションを外から眺めながら、『こんなところにいたんだ』なんて呑気に他人事で。 建物の前で待ってもらっていたタクシーに乗り込み 新幹線の時刻表を再度確認してから出発。 マンションの横を通り過ぎながら ふと思ってしまう。 夢の国の出口で名残り惜しく 帰りの電車で物思いにふける、あの感じみたいだなって。 何を例えにしているんだろ、私はーーーー
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