221人が本棚に入れています
本棚に追加
/175ページ
まわりからの視線に目もくれず
建物の廊下を走る。
エレベーターの下ボタンを押しても
待つ余裕なんて、時間も気持ちもあったものじゃなく、非常用階段を駆け下りた。
車が停めてある駐車場は地下にあり
構造上、非常用階段で降りるのは不可能。
1階まで戻ってきたら
そこから結局エレベーターで降りないといけない。
フロントロビーまで到着し
足を止めずそのまま地下エレベーターまで走った。
時間なんて、さほど進んでいないのに
さっきから気になって腕時計を何度も見る始末。
こんな事ならもっと早く向かえば良かったと
後悔しても仕方ないのはわかっているのに。
「然ッ!」
エレベーターを待っていた俺は
とにかく落ち着きがなかったんだと思う。
俺の名を呼びながらこちらに駆け寄ってくる美南に、一切気が付かなかった。
「ごめん、急いでいるんだ。
用事ならあとにしてくれ」
つい口調が強くなる。
そんな俺の言い方に
美南は一定の距離を空けながら悲しそうな表情で見る。
最初のコメントを投稿しよう!