この手を離さないように…

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ーーーーーまもなく○番線に新幹線が参ります ホームアナウンスが流れ 時間を気にしていた人々が ゾロゾロと集まってくる。 「もう時間か…」 駅のベンチに腰掛けて腕時計で時間を確認すると 乗車のために立ち上がり キャリーケースを引いて皆と同じ方向へと進む。 新幹線が来るまであと少し。 ポケットからスマホを取り出し 母に『今から乗るよ』と報告の連絡を入れると またポケットに戻した。 すると、1分も経たずに振動を感じた。 返事が早いな。なんて軽い気持ちで ふと取り出し画面を見て 私の中で一瞬、時間(とき)が止まった。 「然さん…?」 そこに映るのは彼の名前。 それも電話だ。 どうしよう。 新幹線はもう来てしまうのに どんな用事? 出るべき? 見なかった事にするべき? 未だ振動し続ける着信バイブに 躊躇って固まる私。 今更なにを話すのか。 どんな言葉であっても 聞くのは、怖い。 これ以上 改めて”さよなら”なんてツライから。 画面越しに私の気持ちが伝わったのが 着信は切れてしまった。
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